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日記


by hontonohoshi

マスター

マスターが、私たちが生きてる世界じゃないほうに
旅だたれた。

私は、ただただマスターにまだ言ってないことや、
一緒に買い物に行けなかったことやごはんが食べれなかったことが
あふれてきて、
もっとちゃんとマスターと話しをすればよかったなあと
思った。

お店が終わって、帰りぎわに握手をするマスターの手はひんやりと
していて、
その手ももうないんだと
思った。

全部がなくなって、
残るのは思い出だけなんだって
思った。

思い出は、金色になって
目の奥にある。

秋のひかりのなかの金色みたいだった。


マスターの葬儀が終わってから、
八王子の山の中の料亭にごはんを食べに行った。

おおきいおおきい窓から、しずみかけの夕日と富士山が見えた。
オレンジの空に、夕日と富士山がくっきり見えた。

もういちどお経を唱えられているなかで、
日が少しずつ暮れて、
窓から見える景色が暗くなっていって、
その中で、
八王子の街の灯りが、
きらきら光って見えだした。

きれいで、
ほんとに星みたいにきらきらして見えた。

マスターが見せてくれた景色だと思った。

マスターが眠っている棺桶に、花やたくさんのたばこや、
手品のトランプや、服が入れられて、
みんな手をあわせて、
祈って、
そのたくさんの花やたばこやトランプはすごくすごく
そこだけの、どこにもないものだと思った。

花や、ひかりや、おもいは、
そのときの人の気持ちをてらすものなんだと思った。
# by hontonohoshi | 2008-12-14 03:17